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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)148号 判決

神奈川県厚木市長谷398番地

原告

株式会社半導体エネルギー研究所

同代表者代表取締役

山崎舜平

同訴訟代理人弁理士

鴨田朝雄

西森浩司

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

麻生渡

同指定代理人

真鍋潔

長澤正夫

奥村寿一

飛鳥井春雄

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者双方の求めた裁判

1  原告

(1)  特許庁が昭和63年審判第4676号事件について平成3年4月11日にした審決を取り消す。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文同旨

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和56年6月29日、名称を「光電変換装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について、特許出願(昭和56年特許願第101426号)したところ、昭和63年1月20日拒絶査定を受けたので、同年3月17日査定不服の審判を請求し、昭和63年審判第4676号事件として審理された結果、平成3年4月11日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年6月3日原告に送達された。

2  本願発明の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「本願第1発明」という。)の要旨

ハロゲンを含有する単結晶半導体と、該単結晶半導体の光照射側に設けられた高不純物濃度の逆導電型層とを有し、前記単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成されることにより、キャリアの移動が強化されたことを特徴とする光電変換装置

(別紙図面第一の第2図ないし第4図参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願第1発明の要旨は、前項記載のとおりである。

(2)  昭和52年特許出願公開第77683号公報(以下「引用例1」という。なお、別紙第二参照。)には、「塩酸を含む雰囲気中でシリコン基板を熱処理して二酸化シリコン膜を形成する」こと、「この塩酸酸化膜は熱処理工程でウエハ中に発生する結晶の欠陥を吸収する作用を有するため、能動域に存在する結晶欠陥が著しく低減される」こと、「この様な塩酸酸化膜は、一般にナトリウムイオンのトラップ作用を有する」こと、「塩酸酸化により遊離したシリコンが酸素と結合することにより減少する」旨、及び、「シリコン中に形成された空位をCl(即ち、塩素)が埋める役割を果たす」旨が記載されている。

また、昭和39年特許出願公告第9981号公報(以下「引用例2」という。)には、「ハロゲンCl2を含む雰囲気中でシリコンを処理して、表面にゲッター層を形成する」ことが記載されており、さらに昭和50年特許出願公開第39488号公報(以下「引用例3」という。)には、特に第1図に、シリコンの光照射側の所定深さに不純物濃度が約1021cm-3の逆導電型層が形成された光電池が記載されている。

(3)  そこで、本願第1発明と引用例1記載の発明とを対比検討してみると、引用例1記載の発明における「シリコン基板」が「単結晶半導体」であること、「塩酸を含む雰囲気」とは「塩素、即ち、ハロゲンを含む雰囲気」であること、記載されている「塩素の作用」とは所謂「ゲッター作用」であること、一般の半導体装置において、「能動域、或いは能動領域」とは「PN接合を含む領域」であり、且つ、引用例1の第2図においてはn+領域27、即ち、高不純物濃度の逆導電型層を含んでいるので、「能動域に存在する結晶欠陥が著しく低減される」ということは、「所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成されている」ことであり、且つ、結晶欠陥が著しく低減されている以上、キャリアの移動度が改善されていること、即ち、「キャリアの移動が強化されている」こと、及び、「シリコン中に形成された空位をCl(即ち、塩素)が埋める役割を果たす」ということは、「シリコンにハロゲンが含有されている」ことであることは、当業者にとって明らかであるので、引用例1には「ハロゲンを含有する単結晶半導体と、そこに設けられた高不純物濃度の逆導電型層とを有し、前記単結晶半導体が所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成されていることにより、キャリアの移動が強化されたことを特徴とする塩酸酸化による素子間分離を行った半導体装置」が実質的に開示されているとすることが相当である。

よって、両者は、「ハロゲンを含有する単結晶半導体と、そこに設けられた高不純物濃度の逆導電型層とを有し、前記単結晶半導体が所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成されていることにより、キャリアの移動が強化されたことを特徴とする半導体装置」である点で一致しているが、本願第1発明は、対象が光電変換装置であるのに対して、引用例1記載の発明は、素子間分離を行った半導体装置である点で相違しており(相違点1)、また、本願第1発明においては、対象が光電変換装置であるため、「単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に逆導電型層が形成されている」のに対して、引用例1にはその旨の言及がない点でも相違している(相違点2)。

(4)  以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)

引用例1記載の発明は、塩酸酸化による素子間分離を行った半導体装置に関するものであるが、ナトリウムイオン、有害不純物の影響は各種の半導体装置に共通であり、素子間分離とは関係なく塩素によるゲッタリング工程を行っている引用例2記載の発明を参照するならば、引用例1記載の技術事項は素子間分離を行った半導体装置に限らず、各種の半導体装置に適用し得るものであることは当業者にとって、自明の事項にすぎない。

そして、光電変換装置にとっても他に特段の事情がない限り、ナトリウムイオン、有害不純物の影響は同様であるので、光電変換装置に引用例1に記載された塩酸酸化についての技術事項を転用することに格別の相違工夫を要するものということはできない。

(相違点2について)

光電変換装置において、光照射側に高不純物濃度の逆導電型層を設けることは引用例3に記載されているように当然の構成にすぎず、また、光照射側の領域が重要であるので、光電変換装置の能動域に存在する結晶欠陥を著しく低減させるためには、単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成される必要があり、したがって、相違点2は引用例1に記載された塩酸酸化についての技術事項を光電変換装置に転用する場合の当然の構成を単に明示的に限定したにすぎない。

(5)  したがって、本願第1発明は、引用例1ないし引用例3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

以上のとおりであるから、本願は、他の発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

4  審決を取り消すべき事由

引用例1ないし3に審決認定の技術内容が記載されていること、本願第1発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点が審決認定のとおりであることは認めるが、審決は、本願第1発明と引用例1記載の発明との技術的思想の差異を看過し、また、本願第1発明の顕著な作用効果を看過して相違点の判断を誤り、引用例2記載の発明の技術内容を誤認して相違点1の判断を誤り、さらに引用例3記載の発明の技術内容を誤認して相違点2の判断を誤ったもので、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  取消事由1

本願第1発明では、結晶欠陥の原因となる不純物を不純物吸収のゲッタ作用により吸い出した領域に確実に逆導電型層を設けることにより、光電変換で発生したキャリア(ホール、電子)の電位傾斜による移動を強化し、すなわちキャリアのライフタイムを大きくし、光電変換の効率を増大した光電変換装置を安定供給する。これに対し、引用例1記載の発明では、エミッタ・ベース・コレクタ構成の素子間分離に二酸化シリコン膜を形成するのに際し、塩酸酸化を使用し、その後の処理工程で発生する結晶欠陥を減らして、電圧を加えたときのコレクタ・ベース間の遮断性を高めてリーク電流の防止や耐圧の低下を防止した半導体装置を供給する。

したがって、本願発明では少数キャリアのライフタイムを大きくし、取り出せる電流を多くするのに対し、引用例1記載の発明では、多数キャリアを遮断し、漏洩する電流をなくすものであって、対象とするキャリア及び基本概念に大きな差があり、両者には技術的思想の差異があるのに、審決はこの差異を看過したため相違点の判断を誤ったものである。

この点に関連して、審決は、引用例1には実質的に塩酸酸化等の不純物を含んだ雰囲気中での熱処理が不純物吸収のゲッター作用を有することが開示されていると認めている。

しかしながら、引用例1においては、不純物のゲッター作用という文言は使用されておらず、結晶欠陥の吸収ないしは減少及びナトリウムイオンのトラップが開示されているだけである。そして、このような作用が形成された酸化膜にあったとしても、引用例1記載の発明は、形成されるベース領域やエミッタ領域に高い外部電圧が加わったときに、これによるキャリア(多数キャリア)がコレクタ領域からベース領域に流れないことを確実にする、すなわち、コレクタ・ベース間のリーク電流をなくすことを取り上げたものであって、光電変換で発生するキャリア(少数キャリア)のライフタイムに関し重金属などの不純物の影響が問題とならないから、本願第1発明のように不純物吸収のゲッター作用を行う必要性がない。このように、引用例1には、キャリア(ホール、電子)のライフタイムを長くした領域に確実に逆導電型層すなわち電位傾斜を設けることにより少数キャリアの移動を強化し、光電変換の効率を増大した光電変換装置を安定供給するという本願第1発明の技術的思想は、開示されていないのである。

なお、審決は、本願第1発明の実施例における不純物吸収のゲッター作用が塩素を有する雰囲気中での酸化を利用しているのに対し、引用例1記載の発明においても酸化性雰囲気と塩酸雰囲気とを利用しているので、塩酸雰囲気の適用という点で引用例1記載の発明は本願第1発明の開示内容と共通するところがあるところにのみ注目している。しかしながら、本願第1発明が光電変換装置に係るものであるのに対し、引用例1記載の発明は、エミッタ・ベース・コレクタ構成の素子間分離に係るものであり、逆導電型層の形成とゲッター作用の関係、さらにはゲッター作用後の酸化膜の存在に大きな差異がある。すなわち、本願第1発明では、不純物吸収のゲッター作用により拡散を大きくした領域に確実に逆導電型層を設けるために、ゲッター作用を受けて不純物が吸い出されたところ、つまり酸化膜で結晶欠陥を吸収ないし減少する作用が終わった領域に逆導電型層を形成するもので、逆導電型層の形成に先立って酸化膜は除去されている。これに対し、引用例1記載の発明は製造に際して酸化膜の存在下で、結晶欠陥を吸収しつつ、エミッタ・ベース・コレクタを形成し、二酸化シリコンの酸化膜はエミッタ・ベース・コレクタ構成の素子間分離として機能し半導体装置に含まれているのであるから、本願第1発明とは技術的思想を異にする。

(2)  取消事由2

審決は、本願第1発明と引用例1記載の発明との作用効果の差異を看過して、相違点の判断を誤ったものである。

すなわち、本願第1発明の半導体装置は光を受けて電気を取り出す光電変換装置として機能するもので、少数キャリアの移動が強化され、その直接的作用効果は、光吸収で発生した少数キャリアのライフタイムを大きくし、光電変換の効率を増大した光電変換装置を安定供給できることである。

これに対し、引用例1記載の発明は、外部から電気を作用させてその増幅などを行う集積回路として機能するもので、多数キャリアの移動の遮断性が改善され、ベース・コレクター間のリーク電流や耐圧を減少し、外部電圧により流れるキャリアの遮断性を改善したエミッタ・ベース・コレクター半導体装置を供給するという作用効果を奏することができるにすぎない。

また、本願第1発明は、不純物のゲッター作用により、低級の単結晶珪素であっても、「吸出し効果と欠陥の消滅により拡散を1~10μmより200~700μmにまでホール・電子を大きくすることもでき、高純度の珪素半導体層と同様の特性を得ること」(昭和63年4月15日付手続補正書10枚目4行ないし7行)ができるもので、重金属のような不純物が比較的多い低級の単結晶珪素でも光電変換装置に利用できるという大きな効果が得られる。さらに、本願第1発明においては、AM1で16ないし18%の光電変換効率が得られるから、逆導電型層を形成した後にゲッター作用を行なわせたときに得られるAM1での光電変換効率8ないし11%に対して変換効率を著しく向上させることができる。このような顕著な作用効果は、引用例1記載の発明によっては奏されない。

(3)  取消事由3

審決は、相違点1に関し、引用例2記載の発明を引用して素子間分離とは関係なく塩素によるゲッタリング工程を行っていることを示し、引用例1記載の技術事項を広く適用しうることは当業者にとって自明の事項である、と判断している。

しかしながら、引用例2記載の発明は、本願第1発明が技術的課題として解決した問題点を包含しており、引用例2記載の発明から相違点1に係る本願第1発明に至ることは困難である。すなわち、引用例2記載の発明は、拡散法によって所定の活性化領域が生成されたシリコン半導体の表面にハロゲンと酸化性ガスの混合ガスを作用せしめ、表面にゲッター層となる着色膜を生成せしめるものであり、このように所定の活性化領域を生成した後に、ハロゲンと酸化性ガスの混合ガスを作用せしめると、PN接合がさらに深くなってしまうが、これを恐れて混合ガスの温度を下げるとゲッタ作用が不十分になってしまうから、本願第1発明の構成要素である「半導体内の不純物を吸い出したところに逆導電型層を形成した」ことを実現できない。

(4)  取消事由4

審決は、引用例3記載の発明を引用して、光電変換装置において光照射側に高不純物濃度の逆導電型層を設けることは当然の構成である、と認定判断している。そして、引用例3記載の発明は、本願第1発明と同様に、光電池を構成するために光照射側に設けられた高不純物濃度の特性の劣化の解決を技術的課題としており、引用例3には、シリコンの光照射側の表面近くにPN接合を設け、発生した電流を取り出しやすくするために網目グリッドを採用した光電池が記載されている。

しかし、引用例3には、ゲッタに関する記載は全くなく、その記載内容からして、引用例3記載の発明は本願第1発明とは全く別の解決手段を採用していることが明らかである。

審決は、引用例3記載の発明に関し、「光照射側の領域が重要であるので、光電変換装置の能動域に存在する結晶欠陥を著しく低減させるためには、単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成される必要があり」と述べているが、このような必要性があるとしても、引用例3は、別個の解決手段に関するもので、本件発明の解決手段は何も示されておらず、結晶欠陥を問題とする記載は全くなく、その必要性の示唆すらない。

第3  請求の原因の認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3の事実は認める。

2  同4の審決の取消事由は争う。審決の認定、判断は正当であって、審決に原告主張の違法は存在しない。

(1)  取消事由1について

引用例1記載の発明において、ハロゲンを含む雰囲気中で酸化処理を行う主たる目的は、能動領域に存在する結晶欠陥を著しく低減させることにあり、また、ハロゲンを含む雰囲気中で酸化処理により不純物となる金属元素がゲッタリングされることは周知事項であるので、結晶欠陥を著しく低減させるということは、結晶欠陥の原因となる不純物が結果的にゲッタリングされることにもよることは明らかであり、したがって、この点では本願第1発明における結晶欠陥の原因となる不純物を不純物吸収のゲッター作用により吸い出すことと実質的に同一である。

なお、本願第1発明は、光電変換装置を対象とするものであり、この光電変換装置が本願発明の具体的実施例である太陽電池以外にも、フォトトランジスタあるいはフォトトランジスタアレイを含むものであることは、明細書の記載(昭和63年4月15日付手続補正書18枚目11行ないし18行)から明らかであり、この場合には引用例1に記載されたコレクターベース間のリーク電流が同様に問題になる。また、引用例1記載の発明の実施例においてハロゲンを含む雰囲気中での酸化処理後の熱処理工程、すなわちベース拡散工程及びエミッタ拡散工程においては、形成された酸化膜を選択的に除去して不純物を拡散することは極めて一般的な事項であるので、光電変換装置に対してハロゲンを含む雰囲気中での酸化処理を行う場合には、酸化処理後すなわち結晶欠陥を吸収ないし減少する作用が終わった後に光電変換用の逆導電型層を形成するのが相当であり、原告の主張は理由がない。

(2)  取消事由2について

ゲッタリングの対象となる半導体装置の種類が異なれば、半導体装置の動作原理に伴なって具体的作用効果が異なることは当然の事項にすぎない。また、半導体を含む雰囲気中での酸化処理という技術事項を光電変換装置に転用した場合には、少数キャリアの移動が強化されることになることも当業者にとって自明のことである。

そして、ゲッタリングは、結晶欠陥のない、また結晶欠陥の原因となる金属元素等の不純物の極めて少ない単結晶半導体基板を得ることが困難であるため行うものであるから、「低級の単結晶半導体」であればあるほどゲッタリングが必要になることは当然の事項にすぎない。

そして、原告は本願第1発明において16ないし18%の光電変換効率が得られたと主張するが、酸化膜が存在しない場合についての光電変換効率は不明である。仮に、酸化膜が存在しない場合にも同様な光電変換効率が得られたとしても、実施例1を簡略化した実施例3において17.8%という実施例1以上の光電変換効率が得られるということはにわかに信じられないことで、本件出願日以前に逆導電型層を薄くすることにより15ないし18%の光電変換効率を達成した太陽電池が知られており(乙第6号証、乙第7号証)、本願第1発明の作用効果も従来公知の太陽電池を凌ぐ格別顕著な作用効果であるということもできない。

(3)  取消事由3について

審決において、引用例2は、引用例1に記載されたハロゲンを含む雰囲気中での酸化が素子間分離構造を有する半導体装置に限られるものでないことを明らかにするために、ハロゲンを含む雰囲気中での一般的なゲッタリング技術の一つとして引用されたものであり、それ以上の意味はないから、引用例2記載の具体的技術事項が本願第1発明と相違しているからといって、審決が引用例2に記載された技術内容を誤認したということはできず、相違点1の判断を誤ったともいえない。

(4)  取消事由4について

太陽電池等の光電変換装置自体は、引用例を示すまでもなく周知のものであり、光照射側に逆導電型領域を有することも周知であるが、審決において、引用例3は、本願第1発明の実施例に対応して浅い高不純物濃度の逆導電型領域を有する太陽電池が公知であることを明らかにするなめに引用されたものであり、それ以上の意味はない。また、光照射側に高不純物濃度の逆導電型領域を有する光電変換装置においても、有害不純物の影響が不所望であることは当然であり、光電変換装置に引用例1に記載されたハロゲンを含む雰囲気中での酸化技術を転用することに格別の創意工夫は要しないし、さらに、転用した結果として光照射側において単結晶半導体が所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受け、かつ、この所定深さ内に逆導電型層が形成されることは当然であるから、審決の判断は正当である。

また、ゲッタリングすなわち結晶欠陥の問題が特定の種類の半導体装置に限られないことは、周知事項であるから、引用例3にゲッタリング作用に関する記載及び結晶欠陥を問題とする記載がないからといって、引用例3記載の光電変換装置においてゲッタリングを行うことには格別の創意工夫が必要であるという理由にはならない。

第4  証拠関係

本件記録中の証拠目録の記載を引用する(後記理由中において引用する書証はいずれも成立に争いがない。)。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本願第1発明の要旨)及び同3(審決の理由の要点)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  甲第2号証の1ないし4によれば、本願明細書には、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果について、次のとおり記載されていることが認められる。

(1)  本願発明は、AM1下にてその変換効率15%以上を有し、又は蛍光燈下300ルクスにて5%以上を有する高効率の光電変換装置に関する(昭和63年4月15日付手続補正書(以下特に断りなく「手続補正書」という場合はこの手続補正書を指す。)2枚目20行ないし3枚目2行)。

従来から光電変換装置として、別紙第一の第1図に示されたようなIN接合型構造の光電変換装置が知られている。この図面において半導体(1)の上部に逆導電型のN型の不純物層(5)を形成し、この不純物層とオーム接触する電極材料(10)を形成し、さらにフォットエッチング工程によりレジスト(7)をマスクとして不要の材料を選択的に除去する。この後、第1図(C)に示すように反射防止膜(6)(ARFという。)を半導体表面を覆って屈折率が1.8ないし2.2の膜を形成する。また、第1図(A)の工程の後、これら全体に酸化膜を本願発明のように形成し、この酸化膜をARFとして用いることが知られている。しかし、この場合、すでにPN接合があるためその接合がさらに深くなり、ARFとしての屈折率も1.3ないし1.5しか得られず、またその際の膜厚が1/4λとなるため、吸出しに必要な十分な酸化時間がなく、結果として照射面側のN+層(5)の光吸収により光電変換効率の低下をもたらしてしまった。このため別紙第一の第1図(C)のような構造になっても、その効果はAM1(100mW/cm2)にて8ないし11%であり蛍光燈下300ルクスにて1ないし3%までの変換効率しか得られなかった。しかも、反射防止膜(6)を真空蒸着法でSiO等を蒸着して形成した場合、電極(10)の側部(9)が蒸着されにくくきわめて薄くなってしまい、さらに塗付法により形成するとこの側部(9)にのみ本来の700ないし1000Aの厚さではなく5000Aないし1μmも形成されてしまい、この塗布された反射防止膜と電極(10)との熱歪が信頼性の劣化を及ぼすなど工学的に実用性はきわめて困難なものであった(手続補正書3枚目7行ないし5枚目3行)。

本願発明は、〈1〉半導体特に単結晶珪素半導体中に塩素を含有せしめ半導体中での拡散長を無添加に比べて5ないし100倍も大きくすること、〈2〉半導体中のスタッキングフォールト等の欠陥を減少せしめること、〈3〉半導体材料を高温で酸化することにより低不純物半導体中の不純物特に金属不純物をその表面の酸化膜中にゲッター(吸い出すこと)を利用することにより半導体中でキャリア特に少数キャリアの移動を大きくすること、さらに〈4〉この吸出し効果の及ぶ表面(5μm)より浅い領域とくに0.5μm以下にP+N又はP+I、N+I接合を設けることによりその接合面でのキャリアの再結合の防止と接合リークの減少をはかること(手続補正書5枚目5行ないし18行)を技術的課題(目的)とするものである。

(2)  本願発明は、前記技術的課題を解決するために本願発明の要旨記載の構成(平成3年2月14日付手続補正書4枚目2行ないし5枚目7行)を採用した。

(3)  本願発明は、前記構成により、前記(1)記載の欠点のない、かつ、光照射側の領域での光の吸収性を少なくし、さらに入射光の電子、ホール対の発生を促し、このうち特に内部電界が大きな接合部における重金属、欠陥等によるキャリアの再結合を防ぎ、また、塩素の添加された半導体上の不純物領域外周辺の領域下の半導体層に寄生チャネルが形成されることを防止するという効果を有し、これによりリークがなくなり微弱光により発生する弱い電流をも効率良く外部に取り出せることとなり、これらを化合的にかつ相乗的に結合せしめることにより、低級の珪素半導体特に単結晶半導体において大きな効果を奏し、また多結晶においても開放電圧を50mV近くも単結晶同様高くすることができる(手続補正書16枚目13行ないし17枚目20行)という作用効果を奏するものである。

3  引用例1ないし3に審決認定の技術内容が記載されていること、本願第1発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点が審決認定のとおりであることは、当事者間に争いがない。

4  取消事由1について

(1)  甲第2号証の1ないし4に前記2の認定事実及び前記3の争いのない事実を総合すれば、本願明細書には、本願第1発明のゲッター作用について「本発明はこの吸い出し効果を求めるため、塩素を有する雰囲気での酸化を1050℃以上好ましくは1100~1250℃の高温で10分以上好ましくは30分~6時間(さらに長時間でもよい)行わしめることにより重金属のゲッタリングを行い、また、半導体中でのスタッキングフォルトを消滅せしめることを目的としている。」(手続補正書5枚目19行ないし6枚目5行)との記載があり、また、本願第1発明の構成は、「ハロゲンを含有する単結晶半導体(中略)を有し、前記単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けて」いる(平成3年2月14日付手続補正書4枚目2行ないし6行)とされていること、さらに、「基板に対し横方向にPINまたはPN接合をひとつまたは複数個構成せしめつつフォトセンサアレイ等に対してもまたフォトトランジスタまたフォトトランジスタアレイに対しても本発明が適用できることはいうまでもない。」(手続補正書18枚目13行ないし18行)との記載及び「本発明は(中略)〈3〉(中略)半導体中でキャリア特に少数キャリアの移動を大きくすること、さらに〈4〉この吸い出し効果のおよぶ表面(5μm)より浅い領域特に0.5μm以下にP+NまたはP+I、N+I接合を設けることによりその接合面でのキャリアの再結合の防止と接合リークの減少をはかることを目的としている。」(手続補正書5枚目5行ないし18行)との記載もあることが、認められる。

これらの認定事実によれば、本願第1発明においては、単結晶半導体に打ち込まれたハロゲンによって重金属がゲッター作用により除去され、スタッキングフォルト(積層欠陥)の発生が防止されており、このゲッター作用による作用効果は、光電変換装置において逆導電型層のキャリアの移動が強化されるものであるが、ここでの光電変換装置には、太陽電池以外にもフォトセンサアレイ、フォトトランジスタ及びフォトトランジスタアレイを含めて考えることができるから、このような場合にはコレクタ・ベース間のリーク電流も防止できるものであることが明らかであり、また、上記の光電変換装置には、太陽電池以外の半導体も含むから、このように光電変換装置において本願第1発明のようなゲッター作用を施せば、その作用により少数キャリアの移動を大きくすることができるだけでなく、接合面でのキャリアの再結合の防止、さらには接合リークの減少をもはかることができることも、明らかにされている。

これに対し、甲第3号証によれば、引用例1には、所謂VIP法と呼ばれる技法により製造される(2頁左上欄9行ないし11行)従来例についての「この従来例の如く、絶縁物に依って素子間分離を行なった装置では、(中略)この後の各種熱処理工程に於いて発生する結晶欠陥はそのまま能動域に存在し、装置の特性を劣化させる。即ち、コレクタ・エミッタ間或いはコレクタ・ベース間のリーク電流が増大したり、コレクタ・ベース間耐圧が低下したりする。本発明は、(中略)後の工程で発生する結晶欠陥を減らすことのできるようにして、特性良好な半導体装置を得ることを目的とし、素子間分離を行なう絶縁物層の形成を塩酸が含まれた酸化性雰囲気中で行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法、を提供するもの」(2頁右上欄1行ないし15行)との記載、「本発明では、(中略)二酸化シリコン膜24を形成する際、ウエハを(酸化性雰囲気+塩酸(HCl)雰囲気)中に配置して熱処理を行ない、二酸化シリコン膜を形成するものである。この塩酸酸化膜は、熱処理工程に於いてウエハ中に発生する結晶の欠陥、特にシャロービットを従来の高濃度不純物拡散領域と全く同様に吸収する作用を有し、この二酸化シリコン膜で素子間分離を行なった装置では、第2図従来例と比較すると、能動域に存在する結晶欠陥は著しく低減され、装置の諸特性は優れている。」(2頁右上欄17行ないし左下欄8行)との記載があることが認められる。したがって、引用例1記載の発明においても、ウエハを塩酸酸化性雰囲気中で熱処理することによって本願第1発明と同様のゲッター作用が行われ、これによってウエハ内の不純物金属をゲッターし、半導体装置のスタッキングフォルト(積層欠陥)の発生を防止していること、引用例1記載の発明の半導体装置においても、このゲッター作用の効果として、コレクタ・エミッタ間又はコレクタ・ベース間のリーク電流を防止し、またコレクタ・ベース間の耐圧を高めることができることが明らかであり、さらに引用例1記載の発明のバイーポーラトランジスタでは、例えば、NPNバイーポーラトランジスタの場合、エミッタから注入された電子はそれがコレクタ領域に到達した場合には多数キャリアになるものの、P型のベース領域においては少数キャリアとなるものと理解できるから、キャリアのライフタイムの向上にも寄与しているものと認めることができる。

以上によれば、本願第1発明は、ゲッター作用により光電変換装置においてキャリアのライフタイムの向上、さらには接合面でのキャリアの再結合の防止と接合リークの減少がはかられており、他方、引用例1記載の発明の半導体装置においても、本願第1発明と同一のゲッター作用により接合リークの減少、接合間の耐圧向上、さらにはキャリアのライフタイムの向上がはかられていることが明らかであるから、本願第1発明と引用例1記載の発明とはゲッター作用及びその効果において差異がないものであるから、この点では両者の技術的思想が相違しているということはできない。

ところで、本願第1発明の要旨によれば、本願第1発明では「所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、前記所定深さ内に前記逆導電型層が形成され」ているが、甲第3号証によれば、この点に関して引用例1には、従来例の説明として「不純物拡散領域4に於ける不純物濃度が極めて高いため、その部分で結晶欠陥が発生し、その後の熱処理工程、例えばベース領域6或いはエミッタ領域7等の形成工程で発生する欠陥を吸収してくれるので、ウエハの結晶特性は比較的良好な状態に保たれる。」(1頁右欄8行ないし13行)と記載され、また、引用例1記載の発明の目的として「本発明は、半導体装置に於ける素子間分離を絶縁物で行なった場合に於いても、後の工程で発生する結晶欠陥を減らすことのできるようにして、特性良好な半導体装置を得ることを目的」(2頁右上欄9行ないし12行)とすることが記載されており、したがって、引用例1記載の発明においてもゲッター作用を受けた領域に活性領域を形成することが記載されており、この点でも引用例1には本願第1発明と同様の技術的思想が開示されているということができる。

以上のとおりであり、本願第1発明と引用例1記載の発明とを比較して検討しても、審決が本願第1発明と引用例1記載の発明との技術的思想の差異を看過したということはできない。

(2)  なお、引用例1記載の発明が、塩酸酸化等の塩素を含んだ雰囲気中での熱処理によってナトリウム等の金属不純物をゲッターし、スタッキングフォルト(積層欠陥)の発生を防止するものであることは、乙第1ないし第3号証及び第5号証(本件出願当時の半導体装置の製法に関する特許出願公開公報及び技術文献)の記載から明らかであり、これは本願第1発明におけるゲッター作用と同一であるというべきであるから、引用例1には実質的に塩酸酸化等の不純物を含んだ雰囲気中での熱処理が不純物吸収のゲッター作用を有することが開示されていると認めた審決の認定判断には誤りはない。

(3)  また、本願第1発明の要旨には酸化膜の存在の有無に関する記載がないが、前記2の認定事実から窺われる本願発明の趣旨からして当然酸化膜の形成後に逆導電型層が形成されると判断され、本願発明の実施例1ないし4及び図面を参照すれば、本願第1発明において酸化膜は選択的に除去されていると認められる。これに対し、前記(1)において認定した引用例1の記載事項に照らせば、引用例1記載の発明においても、塩酸酸化処理時に形成された酸化膜はその後の熱処理工程、すなわちベース領域又はエミッタ領域等の形成工程を実行するために酸化膜は選択的に除去されるものと認められる。

したがって、本願第1発明では逆導電型層の形成に先立って酸化膜は除去されているのに対し、引用例1記載の発明は酸化膜の存在下でエミッタ・ベース・コレクタを形成するから、本願第1発明とは技術的思想を異にする、との原告の主張は失当である。

5  取消事由2について

(1)  引用例1に記載された塩酸雰囲気中での酸化処理が本願第1発明と同様のゲッター作用であることは前記4において検討したとおりであるが、この塩酸酸化雰囲気中での酸化処理によるゲッタリング技術が引用例1記載の発明のような素子間分離構造を有するエミッタ・ベース・コレクタ半導体装置に特有なものでなく、広く各種半導体装置に適用される技術であり、この手段によるゲッター作用が一般的に接合リーク電流の増大、接合間の耐圧不良、さらにはキャリアのライフタイムの減少を防止できるものであることは、乙第1ないし第3号証及び第5号証の記載事項並びに弁論の全趣旨に照らし明らかである。

したがって、塩酸雰囲気中での酸化処理であるゲッタリング技術を本願第1発明のような光電変換装置に適用した場合、少数キャリアの移動が強化されるであろうことは当業者にとって自明のことであり、審決がこの点に関する作用効果を看過し、相違点の判断を誤ったということはできない。

(2)  なお、原告は、本願第1発明は、不純物のゲッター作用により重金属のような不純物が比較的多い低級の単結晶珪素の光電変換にも利用することができる、と主張するが、本願第1発明は低級の単結晶珪素を対象とすることを構成要件とするものではないから、原告の主張は理由がない。

また、仮に対象とする単結晶半導体が重金属のような不純物が比較的多く含まれる低級の単結晶珪素であれば、塩酸雰囲気中での酸化処理によるゲッター作用が極めて有効に機能するであろうことは、当業者の当然に予測しうることであり、格別のことではないといわなければならない。

(3)  また、原告は、本願第1発明は、AM1で16ないし18%の光電変換効率が得られる、と主張している。

しかしながら、甲第2号証の3によれば、本願明細書には、実施例の光電変換の実験結果としてAM1において、実施例2では16ないし18%の光電変換効率が得られた(手続補正書15枚目7行ないし9行)が、実施例1では12ないし15%(手続補正書12枚目3行ないし4行)であり、実施例3では最大17.8%を得た(手続補正書16枚目9行ないし11行)ことが記載されていることが認められ、本願発明における光電変換効率は実施例によって差異があることが明らかである。甲第2号証の3によれば、これらの差異は各実施例が製造工程を異にすることに基づくこと、各実施例ともハロゲンを含有する単結晶半導体が所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けている点では共通しているものの、その他の製造工程上の要件は異なり、それに伴なって光電変換効率が異なったものとなったと認められる。

したがって、本願第1発明の、ハロゲンを含有する単結晶半導体が所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けているとの構成しか満たさないものによっては、従来のものに比して光電変換効率の向上は認められるものの、常に16ないし18%もの光電変換効率が認められるかは明らかでなく、上記の光電変換効率の向上も当業者が予測しうる範囲を越えていると認めることはできず、原告の主張は採用できない。

6  取消事由3について

引用例1記載の発明における塩酸雰囲気中での酸化処理がゲッター作用であり、本願第1発明の場合と同一であることは、前記4において検討したとおりであり、また、甲第4号証と対照すると、引用例2記載の発明も同様の手段によるゲッター作用を呈することは明らかであるから、これら三者のゲッター作用は、同一のものであると認められる。

ところで、前記3の争いのない事実と前記4における検討の結果によれば、引用例1記載の発明の塩酸雰囲気中での酸化処理によるゲッター作用は素子間分離構造の半導体装置を対象としていたのであるが、上記のとおり塩酸雰囲気中での酸化処理によるゲッター技術は各種半導体装置に共通の技術であるから、引用例1記載の発明におけるゲッター作用が素子間分離構造の半導体装置に特有のものでないことを明らかにするために引用例2を引用した審決の認定判断には、何らの誤りもないというべきである。

また、このゲッタリング技術が半導体装置の活性化領域の形成時期と不可分の関係にあるということはできず、別個に切り離して考えることができるから、仮に、引用例2記載の発明が塩酸雰囲気中での酸化処理によるゲッター作用以外の点、すなわち半導体内の不純物を吸い出したところに逆導電型層を形成していない点で本願発明と相違するとしても、光電変換装置に引用例1に記載された塩酸酸化についての技術事項を転用することに格別の創意工夫を要しないとした審決の認定判断には、何ら不当な点はないというほかはない。

7  取消事由4について

前記3の争いのない事実によれば、引用例3記載の発明は光電変換装置において光照射側に高不純物濃度の逆導電型層を設けるものであることが明らかであり、審決が本願第1発明の光電変換装置において光照射側に高不純物濃度の逆導電型層を設けることが公知であることを明らかにするために引用例3を引用した点には、何らの誤りもないというべきである。原告は、引用例3にゲッタリングに関する記載がないこと、引用例3記載の発明が本願第1発明とは別の解決手段を採用していることを主張して、審決を非難するが、審決が引用例3を引用した趣旨を誤解するもので、採用の限りではない。

そして、このような光照射側に高不純物濃度の逆導電型層を設ける光電変換装置においてもナトリウム等の有害不純物の影響が不所望であることは、各種半導体装置と共通していることから、当然の事項と認められる。したがって、相違点2について、単結晶半導体が光照射側において所定深さまで不純物吸収のゲッター作用を受けていて、その所定深さ内に逆導電型層が形成される必要があり、引用例1に記載された塩酸雰囲気中での酸化処理を光電変換装置に転用する場合の構成を単に明示的に限定したにすぎないとした審決の認定判断は、正当である。

8  よって、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 成田喜達 裁判官 佐藤修市)

別紙第一

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙第二

〈省略〉

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